厚生労働省からのプレスリリース
母乳の放射性物質濃度等に関する調査について
母乳の放射性物質濃度等に関する追加調査について(PDF:510KB)
厚生労働科学研究班からのプレスリリース
2011年6月7日
母乳中の放射性物質濃度等に関する調査について(pdf file, 455kB)
論文発表
報道例
NHKによる報道
母乳から微量の放射性物質
『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会
母乳調査 今後の対策について
過去のフォールアウトの比較は、事故前の降下量データとの比較となっています。
事故当時の降下量は、東京でも『2011-03-21 9:00 ~ 2011-03-22 9:00』の期間に放射性セシウムで10.6 kBq/m2、I-131で32 kBq/m2に達していました。
自治体からのプレスリリース等発表
福島県
いわき市
新潟県
那須塩原市
埼玉県
国立病院機構福島病院
おっぱい通信第3号放射性物質と母乳について
関連学会による解説資料
現在、追加分を準備中です。
日本医学放射線学会
日本産科婦人科学会
日本産婦人科医会
日本周産期・新生児医学会
日本小児科学会
日本放射線科専門医会・医会
(50 音順)
による「母乳中放射性物質濃度等に関する調査」についてのQ&A
日本産科婦人科学会
「母乳中放射性物質濃度等に関する調査」についてのQ&A」
「放射性ヨウ素(I-131)が検出された母乳に関し、乳児への影響を心配しておられる授乳中女性へのご案内」
FAQ
ヨウ素131やセシウム137は同時に測っているのですか?
ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー では、放射性物質から放出される放射線をエネルギー毎(放射線はエネルギーの大きい粒々で、一つ一つの粒々がエネルギーを持っています)に数えます。
放射性物質から放出されるγ線は、ヨウ素131やセシウム137などの種類毎に特定の値なので、
どのエネルギーのγ線がどれだけ出ているかがわかるとそれぞれの種類毎の量を推計できます。
検出下限値がバラバラなのは何故ですか?
母乳中や私たちの周囲の環境には自然の放射性物質があり、これらから放射線が放出されています。
ヨウ素131やセシウム137を検出するには、それらからの放射線をシグナルとして、他の放射線のノイズの中から見いだす必要があります。
シグナルとノイズの比は、
・試料の量
・測定時間
・その他(ノイズとなる自然の放射性物質からの放射線の量や検出器の計数効率や遮蔽体の能力など)
で決定されます。
検出されるかどうかは、測定の条件にも依存します(23人中7人検出したとありますが、この7人という情報の意義は限定的です)。
(K-40からの放射線はエネルギーが高く、検出器内などで散乱した際にエネルギーを失うので、当初より低いエネルギーの放射線としてカウントされることがあります。)
なお、検出上限という概念はないので、検出下限ではなく検出限界という用語を述べるべきという意見があります。
(定量下限は、定量上限という概念があるので成り立つ)
東京都による検出限界に関する説明
「水道水の放射能の測定結果について」
健康安全研究センターで測定している蛇口からの水道水、降下物に関する「ND(不検出)」の考え方
東京都による放射能水準調査での計測
都内の水道水中の放射能調査結果
東京都による緊急時の測定:試料水をU-8容器に入れ(=最大でも100 ml)、計測時間1000秒ないし2000秒
放射能水準調査での測定:100リットルの水を蒸発乾固し8万秒以上かけて計測(平常時に0.4 mBq/kgを検出している大阪府の例(pdf file, 913kB))
水産庁の発表例
水産物の放射性物質の検査結果について(pdf file, 7.4 MB)
試料毎に検出限界が明示されているものがあります。
2011年6月7日にプレスリリースされたデータのうち、放射性セシウムで、もっとも濃度が高かったのは、Cs-134: 6.4±0.96[Bq/kg]、Cs-137: 6.7±0.82[Bq/kg]である方で、6.4+0.96+6.7+0.82が最高濃度でしょうか?
±で示しているのは、測定の不確かさを標準偏差で示しています。
放射性物質の計測は放射線を数えています。
放射性物質が放射線を出すのは(その放射線が検出器に入射し、検出器内でエネルギーを失うことも)、確率的な現象なので(=単位当たりの崩壊数は存在する核種の数に比例する=指数関数で減衰する)、必ず不確かさを持ちます。
この試料の放射能濃度で、真の値であることがもっとも確からしいのは、Cs-134: 6.4[Bq/kg]、Cs-137: 6.7[Bq/kg]だと考えられます。
従って、この試料でのもっとも確からしい放射性セシウムの量は、6.4+6.7=13.1[Bq/kg]になります。
6.4+0.96+6.7+0.82が最高濃度である確率は、それよりも小さくなります。
母乳の中には放射性ヨウ素や放射性セシウム以外の放射性物質もあったということですか?
放射性ヨウ素や放射性セシウムよりも自然放射性物質の量の方が多いです。
この存在を避けることは出来ません。
また、少なくとも母乳中の自然放射性物質の量は、それを減らすことの意義が乏しいと考えられています。
放射性ヨウ素は母乳中に濃縮されるのですか?
我が国は比較的ヨウ素の摂取が多い国として知られています。
0.35-2.1 mg/dayの安定ヨウ素の摂取により母乳中のヨウ素の濃度が40-300µg/dayであるとされています(ICRP Pub.95(181))。
ほ乳類では甲状腺と同様の機序で乳房はヨウ素を蓄積するとされています。
経口では摂取後9時間で母乳中の濃度が最高になり、以後12 時間の半減期で母乳中の濃度が減っていくとされています。
放射線防護上は、授乳期では摂取したものの33%が母乳に移行するとされています(ICRP Pub.95(table 5.23.2))。
母乳中の放射性ヨウ素による乳児のリスクはどの程度ですか?
ヨウ素131が10 Bq/kgの母乳を1リットル摂取すると乳児の体内に10 Bqのヨウ素131が取り込まれます。
(バナナ1本当たりのカリウム40の量は20 Bqです。もっとも体内のカリウムの量は恒常的なのでバナナを食べても内部線量が増えることはありません。)
乳児での経口摂取による甲状腺の等価線量への換算係数として2.8×10-3[mSv/Bq]を用いると(原子力安全委員会の環境放射線モニタリング指針の表I-3)、
それによる線量の増加は30 μSvと推計されます。
飲食物の摂取制限の誘導で仮定されている回避線量(=それだけの線量低減が期待できるのであれば、対策を講じることのデメリットがオフセットされうる=多少のデメリットがあっても対策を講じるべき)は甲状腺への等価線量として50 mSvです。
放射性物質が降下してくるというのは日本ではこれまでになかったことですか?
いいえ。
1960年代の大気圏核実験や1986年のチョルノービリ(チェルノブィリ)原子力発電所事故では日本でも放射性降下物が観測されています。
河合 広, 本田 嘉秀, 森嶋 弥重, 古賀 妙子, 木村 雄一郎, 西脇 安, 中国核実験による放射性降下物の観測, 保健物理, 1968, 3 巻, 2 号, p. 273-279
Cs-137とSr-90の降下量の年次推移
Cs-137とSr-90が今でも降下していることを知って心配な方へ
昔の核実験でできた放射性物質が今も残っているって本当?(pdf file, 274kB)
環境放射能水準調査による降下量の総括
平成22年度 環境放射能水準調査結果 総括資料(pdf file, 1.5 MB)
最も高かった粉ミルクの濃度
北海道 1963/9/1 Cs-137: 346.7±23.3 Bq/kg-乾
北海道 1963/9/1 Sr-90 : 20.6±0.6 Bq/kg-乾
フォールアウトに由来した線量
1963年の値、0.15 mSvに比べ、2000年には0.005 mSv
放射線医学総合研究所による内部摂取量調査のデータ
初乳は放射性物質の濃度が高くなりますか?
母乳は授乳時期によって組成割合が変化します。
授乳開始2日後から、Na, Cl,タンパク質の濃度が低下する一方で量が増加します。
出産後、40から96時間後から母乳の生産量は増加し、Caの濃度は倍程度に増加します。
Naの濃度が初乳では高いと言うことは、初乳中にはCs-134やCs-137が高い濃度で含まれるのではないですか?
初乳中の放射性セシウムの濃度の方が高くなることが考えられますが、摂取量を考慮すると経口摂取が著しく大きくなることは考えがたいでしょう。
放射性物質を摂取した時期と母乳中の濃度とは、関係があるのではないですか?
関係があります。
母体の一回摂取により母体の血液中に移行した放射性物質が母乳に移行する割合
放射性核種 | 妊娠初期 妊娠5週 | 妊娠後期 妊娠35週 | 授乳期 出産後1週間 |
---|---|---|---|
Sr-90 | 5.3E-03 | 6.3E-02 | 2.1E-01 |
I-131 | – | 7.4E-04 | 3.0E-01 |
Cs-137 | 6.8E-03 | 1.2E-01 | 1.8E-01 |
【出典】ICRP 95 Table 4.1
放射線リスク管理の観点からは、濃度の変化だけではなく摂取量も考慮する必要があります。
母親の放射性物質の経口摂取により子が受ける線量
I-131
【出典】ICRP 95 Fig. 4.4
Cs-137
【出典】ICRP 95 Fig. 4.5
初乳を冷凍保存すると放射性ヨウ素の量を減らせますか?
8日間の保存でI-131の放射能量は半分に減らすことが出来ます。
その一方、初乳中の免疫グロブリンの吸収能が子供の成長過程で変わることが考えられることから総合的に考える必要があるでしょう。
飲食物の摂取制限はCs-134とCs-137を合わせた放射性セシウムで与えられていますが、単純に足して比べてよいのですか?
経口摂取したCs-134とCs-137が単位放射能あたりに与える線量は、Cs-134とCs-137では、ほぼ同じです。
従って、重み付けせずに、そのまま足して構いません。
希望すればこの研究班で母乳中の放射性物質の量などを計測してもらえるのですか?
研究班は調査研究事業として、母乳中の放射性物質の量を計測しました。
調査研究の目的は、ある範囲での実態を把握することであり、地域毎にサンプル数を割り付けて協力をお願いして実施しました。
残念ながら、希望する方に母乳中の放射性物質の量を計測するサービスは、この研究班では、提供していません。
ただし、調査にご協力頂いた方で検出限界を超えた方には希望があれば再検査することにしています。
放射性物質の体内への取り込みはどのような経路が考えられますか?
初期は吸入曝露で、その後は経口摂取が考えられます。
一回の測定でそれらの寄与を推計することは限界がありますが、
仮定をおけば測定値から体内残存量、吸入量や摂取量、預託線量などを推計することができます。
I-131の血液から甲状腺への移行係数と甲状腺等価線量
放射性物質の代謝
母乳中の放射性物質をゼロにすることはできますか?
いいえ、できません。
母乳中には、10 Bq/l程度の放射性カリウムが含まれていますが、それを取り除くことはできません。
この他にも自然の放射性物質が含まれていると考えられます。
事故前から大気圏核実験などに由来した放射性セシウムなどが食品中から検出されることがありました。
また、平常時でも数mBq/l程度の放射性ヨウ素が水道水に含まれていることがあります。
牛乳中のK-40の濃度はどの程度ですか?
日本の環境放射能と放射線のデータベースでは、以下のようになっています。
最小値 | 平均値 | 最大値 | 全試料数 | 検出数 | 非検出数 |
---|---|---|---|---|---|
9.0 | 47 | 160 | 3,620 | 3,617 | 3 |
他の測定例
常総生協
母親のI-131の経口摂取により母乳を介して乳児が受ける線量
慢性曝露では授乳期の摂取がもっとも実効線量換算係数が高く、その値は、5.5×10-8[Sv/Bq]です。
短期間曝露でも授乳期の摂取がもっとも実効線量換算係数が高く、その値は、5.6×10-8[Sv/Bq]です。
【出典】ICRP Pub.95
母親のI-131の吸入摂取により母乳を介して乳児が受ける線量
慢性曝露では授乳期の蒸気状ヨウ素の吸収摂取がもっとも実効線量換算係数が高く、その値は、5.0×10-8[Sv/Bq]です。
短期間曝露でも授乳期での摂取がもっとも実効線量換算係数が高く、その値は、5.1×10-8[Sv/Bq]です。
【出典】ICRP Pub.95
I-131の摂取による母親の預託線量と母乳を介して乳児が受ける線量の比(乳児線量/母親の線量比)
短期間曝露
吸入摂取:2.5
経口摂取:2.5
慢性曝露
経口摂取:2.4
【出典】ICRP Pub.95
Cs-137の摂取による母親の預託線量と母乳を介して乳児が受ける線量の比(乳児線量/母親の線量比)
短期間曝露
吸入摂取:0.28
経口摂取:0.29
慢性曝露
経口摂取:0.20
【出典】ICRP Pub.95
母親のI-131の経口摂取により胎児が受ける線量
妊娠35週での摂取がもっとも実効線量換算係数が高く、その値は、6.0×10-8[Sv/Bq]です。
この線量には、出生後の母親からの曝露も含み、その寄与は1割程度です。
【出典】ICRP Pub.88
日本産科婦人科学会
乳児用粉ミルクの放射性セシウム汚染について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内(平成23年12月8日)放射性セシウムにはCs137とCs134があります。
放射性セシウムにはCs-137とCs-134があります。
回収例自主的な商品の交換
放射性セシウムが検出された粉ミルクについて
育児用粉ミルクの放射性物質検出について
明治粉ミルクから放射性セシウム 原発事故後に埼玉県工場で加工
線量推計例
第6回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議
資料1-2被ばく線量に係る評価について
放射線医学総合研究所による推計例が示されています。