原子力発電所事故に伴う放射線への曝露

時間の経過とともに放射線への曝露はどのように変化していますか?

注意

このページには放射線飛跡図が示されています。

時期による線量の受け方の違い

事故当初

放射性物質や大気や海洋に放出されました。

原子力安全・保安院による放射性物質放出量データ

報道発表資料

外部被ばく

大気に放出した放射性物質からの放射線を受けました。
その量は大気中濃度の情報や空間線量の情報から推定できます。
希ガス状の放射性物質からの放射線も受けています。
サブマージョンによる曝露と称されます。体外からの外部被ばく、呼吸による肺への取り込みによる曝露、一部体内に取り込まれることによる内部被ばくから構成されます。放射性核種が存在している場所での崩壊に伴い放出された放射線の対象臓器でのエネルギー沈着を評価するという観点では、外部被ばくと内部被ばくの評価で本質的な違いはありません)

福島県による推計結果の発表

基本調査(外部被ばく線量の推計)の概要
外部被ばく線量の推計結果

日本分析センターによる空気中の放射性核種の分析

事故直後の希ガス濃度等の調査結果

内部被ばく

大気に放出した放射性物質を吸入することで放射性物質を取り込みました。
この時期では地表へのフォールアウトが少ないので内部被ばくの寄与の方が一般に大きくなります。

外部被ばくと内部被ばく時の生体内電子の飛跡シミュレーション

Cs-137によるそれぞれの曝露

現在の放出量

福島第一原子力発電所からの放射性物質の放出量について
Q.福島第一原子力発電所1~3号機からの放射性物質の放出は続いているのですか?(3月12日更新)
原子炉建屋上部の測定の様子

地表などへのフォールアウト蓄積時期

外部被ばく

地表などへのフォールアウトした放射性物質からの放射線を受けることになります。
その量は累積降下量や空間線量の情報から推定できます。

内部被ばく

放射性物質が含まれる飲食物を摂取することで、放射性物質を取り込むことになります。

線量の評価法

計算で求める方法

環境中に放出された放射性物質の挙動を考慮した分布情報から、線量を計算することができます。

測定で求める方法

環境放射線モニタリング

空間線量や環境試料や飲食物などのモニタリングの結果から、線量を推計することができます。

体外計測

体に取り込んだ放射性物質を体外で放射線計測することで推定する方法で、摂取パターンから過去の摂取量や預託線量(=体に摂取した放射性物質によって受け続ける放射線の量)を推計します。
福島県における小児甲状腺被ばく調査結果について(pdf file, 61kB)warp_logo

ホールボディカウンター(WBC)のピットホール

核医学診療を受けた患者では、放射性医薬品に由来した放射線を検出することがあります。

バイオアッセイ

尿などの生体試料中の放射性物質の量を測定することで、摂取パターンから過去の摂取量や預託線量(=体に摂取した放射性物質によって受け続ける放射線の量)を推計します。

臨床症状からの推計

高い線量を受けたかどうかは臨床症状から推計できます。

細胞遺伝学線量推定法

リンパ球培養後に染色体標本を作り、不安定型染色体異常の頻度から調べる方法です。事故時の事後評価のゴールデンスタンダードです。
時間が経過した場合には、安定型染色体異常を調べることが試みられています。

RERF

RERF’s Responses to the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant Crisis
Biological dose assessment

EPR BioDose 2013

Session A: Dosimetry for Fukushima accident – lecture room ‘Amsterdam’ Chair: Y. Suto and M. Yoshida
Yumiko Suto: First report on biodosimetry of restoration workers for Tokyo Electric Power Company Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident
Mitsuaki A. Yoshida: Chromosome analysis of peripheral lymphocyte from the persons worked in the Fukushima Dai-Ichi Nuclear Power Station after the accident
Ying Chen: Cytogenetic Investigation of the personnel living in Japan after one year of Fukushima nuclear accident
Biodosimetry of Restoration Workers for The Tokyo Electric Power Company (TEPCO) Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Accident.

注意

抄録の30 mGyは300 mGyのミスプリです(修正されています)
PubMed版はまだ修正されていません。

不対電子を計測する方法

電子スピン共鳴法により放射線照射により生成された不対電子を計測して線量を推計する方法です。歯など不対電子が安定に保持される試料に対して行われます。
最近では抜歯せずに測定する方法が開発されつつあります。
EPR線量測定研究
また、 X bandを用いた方法では、原爆被爆者でのバイオドシメトリが試みられています。
Yuko HIRAI, Yoshiaki KODAMA, Harry M. CULLINGS, Chuzo MIYAZAWA and Nori NAKAMURA: “Electron Spin Resonance Analysis of Tooth Enamel Does not Indicate Exposures to Large Radiation Doses in a Large Proportion of Distally-exposed A-bomb Survivors”. Journal of Radiation Research, Vol. 52, 600-608 (2011) .

その他

放射線による生体応答を計測する試みが研究されています。

健康への放射線影響

小児のリスク

確率論的環境影響評価のための 生涯がんリスク解析に関する報告書(原子力安全基盤機構)
必ずしもリスク推計を目的とした報告書ではありません。

NEJMに掲載された解説

Short-Term and Long-Term Health Risks of Nuclear-Power-Plant Accidents(pdf file, 1.9 MB)

N.Y.Timesの解説記事

Assessing the Radiation Danger, Near and Far

曝露量推計

東京電力福島第一原子力発電所事故発生後2ヶ月間の日本全国の被ばく線量を暫定的に試算

情報提供サービス

放射線に関するご質問に答える会の開催について(お知らせ)

除染活動

学校等における放射線量低減対策モデル事業への日本原子力研究開発機構の協力について(お知らせ)

成果

福島県による学校等における放射線量低減対策モデル事業の支援 成果の概要(pdf file, 201kB)

FAQ

今でも大気中に放射性物質が漂っているのですか?

様々な放射性物質が大気中に存在しますが、東電福島第一原子力発電所事故に由来した放射性物質も大気中に存在していると考えられます。

測定例
平成24年6月に新潟県内で約5μBq/m3の濃度のCs-137が検出された例

今でも大気中に放射性物質が放出されているのですか?

2011年6月下旬には、最大でも毎時10億ベクレル(=1GBq)の放出に低減しています。
福島第一原子力発電所 周辺環境への影響
7月19日に決定した「東京電力福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋 進捗状況」について公表します。(平成23年8月17日)
空気中の放射性物質の供給源としては、福島第一原子力発電所以外も考えられます。

大気圏核実験のピーク時の汚染に比べて、どちらが大きいのですか?

比べる地域や比べ方によります。
関連した情報
全身計測装置で調べた例

粉乳による曝露

1960年代前半の体内の放射性物質量のうち、粉乳に由来したものの推計例です。

最高濃度データ

北海道 放射能測定調査 牛乳 粉乳 1963/9/1 1963 標津郡中標津町 Cs-137 346.69 23.31 Bq/kg-乾

一日摂取量

36Bq/day程度(年間だと13kBq/year程度)

体内残存量

それを飲み続けていると1kBq/body程度には到達することが考えられそうです。

原爆と比べて原子力発電所事故で放出される放射性物質は半減期が長いのでなかなか減らないと聞きました。どうして、原子力発電所事故で放出される放射性物質の減衰は遅いのですか?大気圏核実験のピーク時の汚染に比べて、どちらが大きいのですか?

原爆では核分裂の継続時間が極めて短かったので、短半減期核種の割合が相対的に多くなっています。
それに対して一定期間運転した後の原子炉の事故では、それまで生成された核分裂生成物や放射化核種のうち、半減期が短い核種は減衰してしまうので、長半減期核種の割合が相対的に大きくなります。
原爆と原子力発電所事故で総放射能量で比較する場合には、注意が必要となりますが、通常は、核種種類ベースで比較されますので、関心核種毎に比べることになるでしょう。
また、放出された核種のうち、線量に(個人やあるいは集団として)どのように寄与するかは、放出のパターンにも依存します。

核分裂連鎖反応による放射線

原爆では、核分裂連鎖反応による放射線であるガンマ線と中性子線に人々が曝されました。

誘導放射能

原爆では、中性子の放出を伴ったために放射化核種が環境中に出現しました。
原子力発電所事故では、運転中に生成された放射化核種も環境中に放出されています。

I-131の半減期は8日間ですが、I-131は崩壊して、半減期がより長いXe-131m(半減期11.8日)が生成されるので、受ける線量がもっと多くなるのではないですか?

I-131のうちXe-131mを経由してXe-131(安定同位体)に崩壊するのは、1.2%です。
このため、I-131に比べると、その生成量は小さく、最大になる16日後で当初あったI-131の0.5%程度に過ぎません。
また、Xeは希ガスであるために、単位放射能あたりの線量がI-131よりも小さくなります。

放射性ヨウ素のうち、I-129は半減期が1.6×107年と長く、甲状腺等価線量換算係数が比較的大きいので心配です。

放射性セシウムとは明らかに、心配の度合いが違うと思います。
放射性ストロンチウムと同様に、これもβ崩壊のため、数値的裏付けが無い分、いつまでも不安だけが残るというジレンマで苛立っています。

質問文の誤り?

Cs-134もCs-137もβ崩壊します。
いずれも比較的エネルギーが大きいベータ線を放出するので、GM計数管でも計測しやすいという特徴があります。

核種の物理的な特徴

I-129は、エネルギーが低いγ線とX線を放出する測定が比較的困難な核種です。
β崩壊で最大154 keVの電子を放出するので、それが線量換算係数に寄与していますが、エネルギーが低くGMサーベイメータでの計測は不向きです。
また、有効半減期が長くなることも、線量換算係数に寄与しています。

半減期が長い核分裂生成物質は放射性物質の量としては生成量が少ないという特徴があります

放射性物質から放射線が放出されるのは、崩壊時なので、放射性物質としての量は崩壊数で示されます。
半減期が長い核種は、ある時間内に崩壊する確率が小さくなります。
単位時間あたりにどれだけの割合の原子核が崩壊するかの確率は、崩壊定数で表現されます。
崩壊定数は、半減期に反比例します(=放射性物質はある時間内に崩壊する確率が核種に固有であると仮定すると、微分方程式から、その関係が導かれます)。

難測定核種などでも存在量が推計できます

I-131の半減期が8日であることに比べると、I-129の半減期は1.6×107年(=5.7×109日)なので、I-131とI-129の崩壊定数の比は、7.1×108となります。
セシウムとヨウ素の環境中の挙動が同じと仮定すると、つくば市でのkekのデータを用いると、3/15のCs-137に対するI-131の比は、約9となります。
(核分裂収率から半減期や放出のされやすさ、対象とする環境への到達のしやすさなどを考慮して推計することもできます。)
従って、Cs-137に対するI-129の量は、1×10-8と考えられます。
このようにして、I-129の存在量を推計することができます。
また、I-129による線量とI-131による線量の比較は、存在比と線量換算係数の比から、推計することができます。

表.I-129の預託線量換算係数

年齢区分預託甲状腺等価線量換算係数[Sv/Bq]預託実効線量換算係数[Sv/Bq]
3ヶ月3.9×10-61.9×10-7
1歳4.3×10-62.1×10-7
5歳3.4×10-61.7×10-7
10歳3.7×10-61.9×10-7
15歳2.8×10-61.4×10-7
成人2.1×10-61.1×10-7

まとめ

核分裂の収率、半減期が分かっているので、相対的な放射能がわかり(挙動は同位体による違いが無視できる。海藻などに濃縮されます)、甲状腺等価線量係数なども、わかっているので、リスク評価が可能です。
Te-129mなども同様に考えることができます(=その程度もTe-129m(→I-129)から類推できる)。
Te-129mの線量換算係数

類題

核分裂生成物であるI-135の半減期は6.57時間と短いですが、半減期が9.14時間と同じく短いXe-135を経てCs-135になると半減期が2.3×106年もあり、Cs-135はβ崩壊し、最大269.3keVの電子を放出するので、 大きな線量を与えるのではないですか?

Cs-135の放射能量はI-135に比べると9桁程度小さく、線量としての寄与は10桁程度小さくなります。

人工の放射線と自然の放射線では、人工の放射線の方が同じ線量でもリスクが大きいのではないですか?

等価線量が同じであればリスクは同じと考えられています。
放射線を受けた細胞側はそれが、人工の放射線源によるのか、自然の放射線源によるのか区別できません。
自然の放射線でも健康に影響を与えることが知られています。
この疑問はよく持たれるものだと思います(しかし、自然にも危ないものが沢山
あるのが現実です)。

自然放射線にもリスクがある

今まで自然界にあった放射性核種による放射線は危険ではないと考えておられるとすると、
残念ながら、それは誤りです。

私たちが日常的に受ける放射線のうち、量が多いものとしては、空気中のラドンを吸い込むことによる内部被ばくがあります。
(調べてなっとくノートの24ページをご覧下さい)

幸いに、日本はラドンによる線量は小さいのですが、いくつかの大規模な研究をさらにまとめることで、
生活環境レベルのラドンでもリスクがあることが見いだされ、
WHO(世界保健機関)では、ラドン対策のためのハンドブックを作っています。

海外では、ラドンを規制している国もあります。
また、ラドンによく似た放射性核種によるテロ事件も発生しています。
このように自然界にある放射性核種にもリスクがあると考えられます。

核種による内部被ばくの違い

放射性核種による内部被ばくは、臓器への放射性核種の集まり具合によって、リスクの大きさ(1 Bq食べた場合にがんで死亡する確率)が異なります。
放射線の影響が受けやすい臓器に集まりやすいものは、リスクが相対的に大きくなります。

自然界にある放射性核種であれ、人工の核種であれ、受ける放射線の量(「受ける放射線の種類」や「それぞれの臓器への集まりやすさ」などを考慮して線量を評価しています)が大きくなるとリスクが大きくなります。

内部被ばくと外部被ばくでは、同じ線量でも内部被ばくの方がリスクが大きいのではないですか?

等価線量が同じであればリスクは同じと考えられています。
放射線を受けた細胞側は、その放射線の発生源が体内にあるのか体外か区別できません。
内部被ばくだけでなく外部被ばくでも大きな線量では、健康に影響を与えることが知られています。

小児を対象に甲状腺に取り込まれた放射性ヨウ素を体外測定で調べた調査の結果を教えて下さい。

原子力安全委員会のサイトに資料が提示されています。

放射線のリスクはよく分かっていないというのはどういうことですか?

リスクは線量の大きさに依存します。
線量が小さくとリスクは小さくなります。
しかし、小さいリスクは、それが本当にあるかどうかよくわかりません。
リスクが小さ過ぎてよくわからないということです。

放射線のリスクはできるだけ避けるべきではないですか?後で後悔したくありません。

何でもトレードオフなのでバランスを考えるしかないでしょう。

放射線被ばくについて不安になるより、がん患者として検査につぐ検査を勧められても、地域住民として原発災害に出会っても、トレードオフだからしょうがないと思った方が安心できるということでしょうか?

納得できない検査をすすめられた時には、納得できるように説明を求める必要があるのではないでしょうか。
地域住民として原発災害に出合って不条理な体験で納得できないことがおきたときに、それを無理矢理、問題がないと考えることは無理があるのではないでしょうか。

相手からの面倒な問いかけを上から目線で軽くあしらうという意図ではないでしょうか?

トレードオフを考えることは面倒なことでもあると思います。
また、トレードオフは功利主義的な考え方であり、功利主義は完璧ではないので、それだけでは整理が付けられないでしょう。

リスクをどう考えるかは科学的に判断できますか?

リスクをどう受け止めるかは、主観的な問題です。

安全は科学的・客観的に決められますか?

何が安全かは科学的に決めることが出来ません。

Sr-90は検出されているのですか?

横浜市が採取した堆積物及び 堆積物の採取箇所の周辺土壌の核種分析の結果について(pdf file, 287kB)
東日本大震災の被災地における放射性物質関連の環境モニタリング調査:公共用水域

事故直後の空間線量上昇にはキセノンの寄与が大きかったと理解しています。組織に吸収されないため、内部被曝の心配はないというような記述が多いように思うのですが、たとえ短時間であっても、吸入する空気中の濃度が高ければ、無視しえない被曝量になるようにも思えるのですが、このあたりについでの知見はありますでしょうか。

核分裂生成物の存在割合

核分裂生成物であれば、炉物理で生成量が推定できるので、その情報が使えるでしょ
う。
原子力安全・保安院による放出量データ
Xe-133: 1.1×1019[Bq]
Te-132: 8.8×1016[Bq]
I-131:1.6×1017[Bq]

3日間の平均存在数量
Xe-133: 9.1E+18[Bq]
Te-132: 6.5E+16 [Bq]
I-131: 1.4E+17[Bq]

空間中の放射性核種からの実効線量率[μGy/(kBq/m3)/h]
Xe-133: 0.0052
Te-132: 0.0558
I-131:0.20

3日間の積算空間線量の比(線量としては、これに内部被ばくの分を追加する必要があります)
Xe-133: 1.7
Te-132: 0.13
I-131:1

原子力発電所事故に伴うキセノンなど希ガスの吸入量は、場所によっては、核医学の肺シンチよりも大きくなることが考えられるように思います。その一方で、肺シンチに希ガスを使った場合の線量が著しく低いように思えるのですが、なぜ、乖離があるのでしょうか?

Xe-133を用いた核医学検査により受ける量は、検査の方法によって異なります。
Xe-133が循環閉鎖系で用いられた場合は、患者さんから見るとサブマージョン状態にはならないので、吸い込んだ空気の濃度あたりに受ける線量率は小さくなります。

東京電力によるモニタリングデータ

TEPCO: 3/20以降

空間線量率への寄与を測定した例

高速道路上の放射線分布測定より得られた 福島第一原子力発電所から飛散した放射性物質の挙動

日本保健物理学会研究発表会関連演題

A-42 福島第一原子力発電所事故に係 る大気拡散シミュレーション: 即時評価と詳細
評価 ○城戸寛子、根本誠、黒澤直弘 (VIC)

B-39 福島県における空間放射線線量率と放射性核種の線量寄与率 ○反町篤行、細田正洋、床次眞 司、山田正俊、門前暁、小山内 暢、柏倉幾郎、浅利靖(弘前大)

日本放射線安全管理学会第10回学術大会関連演題

P19 福島第一原発から放出された放射性セシウムの形態 (静岡大理)○矢永誠人

サブマージョン核種からの線量

サブマージョン核種からの線量は、外部+肺に吸い込んだ分+組織に取り込んだ分の合算で求められます。

組織に取り込む分が少なくても(=内部被ばくが小さい)、外部+肺に存在するものからの線量が大きくなると無視できなくなります。

このような線量は、空気中濃度と、空気中濃度から実効線量換算係数の組み合わせで
考えることできます。

時期によるサイトからのプルームの核種組成の違い

放射線量等分布マップの作成等に係る検討会
(第12回) 配付資料
資料第12-1-1号 :文部科学省による放射線量等分布マップ(テルル129m、銀110mの土壌濃度マップ)の作成について

放射性セシウムの内部被ばくによるがんの好発臓器はあるのでしょうか?

環境に放出された放射性セシウムによる放射線曝露

・外部被ばく
・内部被ばく
で人体に線量を与えます。

外部被ばく

主にガンマ線でエネルギーが与えられます
放射性セシウムによるガンマ線は比較的エネルギーが高く体にほぼ均一にエネルギーを与えます

診断領域のエックス線はエネルギーが低いのでより浅い層にエネルギーを与えます。
IVRで皮膚障害が起こります。

皮膚についた汚染や汚染部位の近くでは、β線が皮膚の基底細胞に線量を与えると考えられます。

内部被ばく

・主にベータ線でエネルギーが与えられます
・取り込まれた臓器にエネルギーが与えられます
・放射性セシウムは特異的に取り込まれる臓器がないと考えられています
・体に取り込まれた放射性セシウムは体外排泄時に膀胱を経由するので、膀胱への線量が高くなるのではないかと懸念を表明する研究者がおられます。

膀胱中に存在する放射性セシウムの量から膀胱の上皮細胞への線量への換算は、計算で評価できると考えられています(ただし前提を伴う)

以上から、東電福島第一原子力発電所事故を想定した場合には、
・好発部位はないと考えられる
となるのではないかと思われます。

外部被ばくと内部被ばく

直径10 cmの円柱状の水にCs-137からのγ線を425本入射させたところ

下方から照射している。

電子のみの飛跡を表示

直径10 cmの円柱状の水の内部にCs-137からのβ線を100個発生させたところ

水に与えるエネルギーは、上の例と同等。

給水中の水への放射性物質への混入

10リットルの水を給水するために、3分間程度かかっていました。ポリ容器の入り口から屋外での給水中に放射性物質が入ったのではないでしょうか?

ラフな見積もり例

3分間に1 Bq/gの雨水がポリ容器に入ったとすると、0.1 Bq/Lの濃度増加になります。

放射性セシウムが付着した微粒子の周囲の吸収線量はどの程度ですか?

粒径2μmで10 Bqの粒子を考えたラフな見積もり

その微粒子が同じ部位に1時間付着し続けた場合の線量の推計例です。

結果の解釈での注意

微小領域の線量はラジカル生成密度を示します。
線量の大きさがそのまま生体影響の大きさを示すとは限りません。

1時間の壊変数

10decay/sec×60sec/min×60 min/hr=3.6E+4decay/hr

1時間の放出エネルギーからの微小領域の線量推計

一壊変あたり平均0.5 MeVの電子を放出すると仮定し、
微小粒子がクリアランスされずその場所に留まり続けるとすると1時間で周囲に付与するエネルギーは
0.5[MeV/decay]×3.6E+4[decay/hr]→1.8E+4[MeV/hr]×1.6E-19[J/eV]≒3E-9[J/hr]

深さ100 μmの立方体の範囲でそのエネルギーの全てを失うと仮定すると(微粒子への自己吸収も含めて)、
3E-9[J/hr]/1E-9[kg]=3Gy/h

Cs-134を仮定した場合

Cs_134ball
青い円は半径1 mmの球を示します。
赤い線は高速電子の飛跡です。
黄色い線は制動放射の光子の飛跡です。
(ベータ線による線量)
微粒子から外側の20µmまでの範囲:1.5E+0 Gy/h程度
100〜200µmの範囲:1.5E-2Gy/h程度
200µmから1 mm:4.7E-3Gy/h程度
(ガンマ線による線量)
微粒子から外側の20µmまでの範囲:1.6E-4Gy/h程度
100〜200µmの範囲:1.1E-5Gy/h程度
200µmから1 mmだと1.7E-6Gy/h程度

Cs-137を仮定した場合

Cs_137ball
(ベータ線による線量)
微粒子から外側の20µmまでの範囲:1.2E+0 Gy/h程度
100〜200µmの範囲:0.7E-2Gy/h程度
200µmから1 mm:1.0E-4Gy/h程度
(ガンマ線による線量)
微粒子から外側の20µmまでの範囲:1.5E-4Gy/h程度
100〜200µmの範囲:0.9E-5Gy/h程度
200µmから1 mmだと1.6E-6Gy/h程度

ICRPU Report56のデータを用いた計算(1cm2あたりの平均を求めた場合)

1 Bq/cm2あたり、Cs-1343の場合に深さ70 μmで1.0µGy/h程度、Cs-137の場合に深さ70 μmで1.4µGy/h程度とされています。
ここでの計算では1cm2の範囲にCs-137が均一に分布するのではなく、ごく狭い領域に密集して集まったと仮定し、その周囲の線量を求めています。

このような微粒子が付着した近傍の領域では線量が高くなると考えられますが、組織反応がおきるのではないですか?

組織反応は細胞の脱落により観測される反応なので、一定の範囲の細胞に影響を与える必要があると考えられます。

「線量の大きさがそのまま生体影響の大きさを示すとは限りません。」とありますが、生体影響は線量の大きさに比例するという考え方がこれまで示されてきているのと矛盾するのではないでしょうか?

それぞれのがんによる放射線誘発の発がんリスクの推定のための曝露量評価では、RBEも考慮した上で臓器の平均吸収線量を考えます。
RBE(Relative Biological Effectiveness)とは、生物学的効果比のことです。
小さい線量であることは生成されるラジカル数が少ないことを意味しますが、放射線の影響は生成されるラジカル数だけではなく、その生成密度の不均一さも影響を与えることが知られています。
このため、平均吸収線量が小さくても、リスクが小さくならないことがあります。
マイクロドシメトリは線量を評価する領域が小さくなりますので、それによるリスクを考えるためには、小さい領域に与えられたエネルギーが、どのように生体に影響を与えるかを考える必要があります。

文献

Emission of spherical cesium-bearing particles from an early stage of the Fukushima nuclear accident

環境省による見解

放射性物質対策に関する不安の声について

プルトニウムが不溶性の微粒子に存在している場合(ホット・パーティクル)のリスクに関する検討例

EPA: Health effects of alfha-emitting particles in the respiratory tract
実験データを元に考え方が異なる研究者間での検討により作成されています。

ホット・パーティクルも考慮したプルトニウムのリスクのレビュー例

CDC: Agency for Toxic Substances and Disease Registry, Toxicological Profile for Plutonium

線量推計例

福島県成人住民の放射性セシウムへの経口、吸入被ばくの予備的評価
Preliminary assessment of ecological exposure of adult residents in Fukushima prefecture to radioactive cesium through ingestion and inhalation

WHOのPreliminary Dose Estimation from the nuclear accident after the 2011 Great East Japan Earthquake and Tsunami

FAQのQ.4で保守的な見積もりとありますが、どのような意味ですか?

保守的な見積もりとは?

それぞれの集団内で、より多く曝露した個人の線量を過小にならないように推計しています。
集団の中での平均的な人(例えば中央値に位置する人)が受けた線量が示されたバンドの中にあることは保証されていません。

「全食品が検査されているわけではないし、規制値を超えた食品が流通した可能性は否定できない。このため、規制値超えの食品も少数含めた。」とWHO報告書の考え方を報道している例がありますが、規制値超えの食品はどの程度含められているのですか?また、検査したもののうち規制値超えのものを全て含めた場合には、線量はどの程度になりますか?

ここでの検査では自治体により測定された全ての試料のデータが考慮されています(ただし、国でとりまとめられていない自治体独自の自家製農作物のデータなどは考慮されていない)。報告書には、規制値を超えた食品は全体の中で限られていることが述べられています。なお、パラメトリックな代表値は、構成割合が小さくても、大きく(=いくつかの食品では算術平均が90%タイル値よりも大きくなっている)影響を受けることがあります。

保守的に見積もることの利点と欠点は何ですか?

この報告書で示された推定値(バンド)を超えるような曝露量となることは多くの方で考えがたいという上限を与えることから、個人に与えるインパクトの最大量(バンド)を示されていると考えられます。
このことから、最悪シナリオに従うような個人でも放射線リスクのインパクトが、この報告書から推計される程度内に収まることを示すことができると考えられます。
一方、ここで示された値は、必ずしも「平均的な公衆」を対象にしておらず、Q&Aでも記述されているように多くの方の線量を過大に推定することになります。
各個人の線量を正しく推定するには、どのような行動を取ったかなどの情報が必要です。

WHOのPreliminaryな線量推計の報告書では、放出量推計データをどのように用いていますか?

以下に示されるように限定的なものとなっています。
2.2.1 Radionuclide composition and deposition
At present, source term estimation for the Fukushima accident is associated with considerable
uncertainty. The source terms used in this assessment are applied only to estimation
of doses outside Japan. Two source terms were used as input to an atmospheric
dispersion model, which are similar in terms of the overall magnitude of the main radionuclides
released but differ in the time dependence of the releases (see Annex 4).

用いられたデータ

放射性物質放出量データの一部誤りについて
平成23年5月 12日の時点でのデータ例

UNSCEAR

UNSCEAR’s assessment of levels and effects of radiation exposure due to the nuclear accident after the 2011 great east-Japan earthquake and tsunami

放射線リスク管理

低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ

記事作成日:2011/06/17 最終更新日: 2023/05/08

放射線リスク・コミュニケーションを試みた例(動画)

心臓にセシウムがたまるって本当?

資料を探しに来られたいわき市の保育士の方向けのページです

風評被害

薪ストーブは安全ですか?

トリチウムはどうなっているの?

モニタリングポストの値が変動しています

気体として存在する放射性セシウム

放射線計測の不確かさ

個人線量計の値は正しいの?

原子力発電所事故後の保健師活動

井戸水に自然の放射性物質があると言われました

食品中の放射性ヨウ素の濃度

食品中の放射性セシウムの放射能濃度

Subjective health legacy of the Chornobyl accident

食品の出荷制限と摂取制限

生物への移行係数

調理・加工による放射性核種の除去効果

環境試料の放射能検査と放射線防護

食品中の放射性銀について教えて下さい

外部被ばくと内部被ばく

食品中の放射性核種の摂取量調査・評価研究

放射性物質を含む廃棄物の管理

尿中濃度から預託実効線量の計算はどうすればよいですか?

線量限度の考え方を教えて欲しい

原子力発電所事故に伴う放射線への曝露

線量計のアラーム設定はどうすればよいですか?

放射線の測定器の不確かさが大きいのはどうしてですか?

Cs-137を含む水中で受ける外部被ばく線量

単位摂取量当たりの線量換算係数

放射性物質の代謝

Making Choices: Screening for Thyroid Disease

原発事故などによる放射線曝露での発がんなどのリスク

I-131の血液から甲状腺への移行係数と甲状腺等価線量

クライシス・コミュニケーション

「空気中の放射線量」とは何ですか?

地表面の汚染から受ける線量

農業における対策:チェルノブイリ事故後15年における効率の評価その教訓。

母乳を続けてもよいですか?

皮膚に付いた汚染から皮膚が受ける線量

水道水を飲んでもよいですか?

体表面のサーベイメータによる測定での除染の基準はどうやって決まっているのですか?

放射線の影響に関する健康相談について(+サーベイメータの換算係数)

(緊急時における)食品の放射能測定

原子力発電所の事故により、周辺地域の住民が気をつけることは何ですか?

放射性物質の量とリスク(医療分野との比較)

原子力災害時の対応指針(+ICRPからのメッセージ)Publication111を皆で読もう

CPMとは何ですか?

環境放射線測定状況

原子力災害時における心のケア対応の手引き

安定ヨウ素剤 取扱いマニュアル

装備機器の除染の基準はどう考えるのがよいですか?

フォールアウトしたSr-90による歯への線量と放射性セシウムの体内量