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注意
このページには放射線飛跡図が示されています。
ICRUのReport 56のデータ
がICRP手帳に掲載されています。
それによると、Cs-137の表面汚染(1 Bq/cm2)に対する皮膚から70 μmの深さでの組織吸収線量率は、Cs-137のβ線に由来したもので1.4μSv/hとされています。
0.4 mmの深さでの吸収線量率は385nGy/hで、3 mmの深さでの吸収線量率は0.7nSv/hとされています。
γ線も考慮し、周辺からの後方散乱も考慮した場合
皮膚にCs-137が付着した場合とCs-137を含む水が皮膚に付着した場合の1日間の線量の推計結果を示します。
ともに皮膚の単位面積(cm2)の大きさに1 BqのCs-137が付着したと仮定しています。
Cs-137を含む水は厚みが1 mmと設定していますので、水のCs-137の濃度は10 Bq/gと仮定していることになります。
深いところは、その差は明確ではありませんが、表面付近では違いが見られます。
このことは、表面付近はβ線からの線量が相対的に大きいことを反映しています。
リスク評価での注意
皮膚に照射されることによるリスクは、皮膚の組織加重係数(0.01)、照射される皮膚の範囲を考慮する必要があります。[1]
1×1cm2の広さで指にCs-137が付着した場合の放射線の飛跡図
涙の中のCs-137により眼の水晶体が受ける線量
上と同様の方法で推計することができます。
涙の中のCs-137の濃度を1 Bq/kgとし、涙の厚みを10µmとすると、1cm2あたりの涙の中のCs-137の量は、1[mBq/cm2]となります。
3 mmの深さでの線量率はICRU Report56によると0.7[(nGy/h)/(Bq/cm2)]には記述がありませんが、γ線の寄与を考慮すると4 [pGy/h]であるので、4[nGy/h]となります。
関連情報
[1]β線による実効線量
γ線による実効線量とβ線による実効線量
衣服に付いたCs-137からの放射線量
皮膚に付いたF-18
皮膚表面に付着したF-18が100回崩壊した場合の放射線の飛跡
青色の線は陽電子、黒色の線は光子、赤色の線は電子。
下の緑色の円柱は患者、その上の緑色の円柱は医療従事者を簡易的に模擬している。
漏洩した溶液の厚みが200μm程度であれば、陽電子も医療従事者に到達しうる。
医療での事故例
Contamination of an employee and the break room in a nuclear medicine department