用語
ご/F
合意性の誤謬 False Consensus
自分の判断は一般的で正しく多数意見であるとみなす一方で、違う意見は一般的でなく不適切であるとする考え方。一般に誰でもこのような傾向を持つ。狭い専門領域内のみで活発にコミュニケーションしている専門家は、同様の考え方に囲まれて暮らすことになるので、「社会的現実(=あるコミュニテイ内で共有されるリアリティ)」が強化されやすい。専門家以外のコミュニティー以外の人と率直に情報交換すれば、自らのコミュニティーの中で合意されている考え方が他のコミュニテイでは必ずしも合意されたものではないことが実感できるかもしれないが、意固地になると固定化した役割図式の再生産に至ってしまう。
専門家集団独自の判断基準を妥当性境界と呼んでいる(藤垣(2003))。
議論例
原子力安全委員会第9回安全目標専門部会速記録
こういう合意性の誤謬、フォールス・コンセンサスというのは、普通に話をしなければ、その当人には信念として持たれているものなので、話し合う機会がなければ、自分の意見が多数意見でないというふうに気がつくことは非常に少ないわけです。
参考資料等
「ソーシャルメディアも私たちの何気ない行動を増幅するかたちで、情報に対して見えざる選別の圧力を加えています」(『災害弱者と情報弱者』(2012年))
エコーチェンバー(echo chamber):多様な意見に触れているようで、その実は自分の声が反響している空間(サンスティーン2002-2003)
フィルターバブル(filter bubble):私たちを取り巻く見えない情報フィルターの泡。パーソナライズされていく空間の概念をさらに拡張したもの。(パリサー2011-2012)
バックファイアー効果(backfirer effect):自らと違う意見にある一定期間触れると、その意見に感化されるわけではなく、自らの意見により固執するようになること。情報が拡散すると、社会の分断が拡大する機序を説明しており、訂正情報の拡散がもたらす影響への配慮の必要性を示している。(Stephan Lewandowsky 2014)。
確証バイアス(confirmation bias):自身の信念に対して疑うよりも確証しようとする心理的な認知バイアス( Peter Wason)。生存のためにタイプ1エラーを起こしやすいヒトでは、その誤りを反証する方向に思考が働きにくいとの認知がベースにある。
集団思考仮説 (groupthink hypothesis)
松井 亮太.集団思考の罠. -福島原発事故の失敗の本質についての一考察-
松井 亮太.東京電力のトラブル隠し事件と2006年以降の津波想定の比較分析 行動倫理学の観点から
ネットが社会を分断?
総務省:令和元年版 情報通信白書
インターネットによる世論の二極化についての定量的な研究結果
専門家の役割
(様々な状況が重なり)エコーチェンバーなような状況であっても、内部被ばくと外部被ばくのリスクの比較において、前提を明示したうえで、その弁別が困難であることを論理的に(参加している方々を真摯にサポートなさっておられる)専門家が説明し、その説明を参加者が理解しようとしていた場面もあったのでした。
機能させるための検討
Levarlet F, Berton A, Paterlini C. Scientific literature review on group decision‐making models. EFSA Supporting Publications. 2023;20.
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