用語 げ/T

原子力災害後の甲状腺モニタリング
Thyroid Health Monitoring after Nuclear Accidents

IARC

IARC Technical Publication No. 46: Thyroid Health Monitoring after Nuclear Accidents

第⼀章 要約

原⼦⼒災害に備えることの必要性が指摘

原⼦⼒発電の利⽤状況

チェルノブイリ原⼦⼒発電所事故では放射性ヨウ素への曝露で⼩児期および⻘年期の曝露後の甲状腺がんの罹患率の増加

東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所事故後にも、甲状腺がんのリスクに関する公衆衛⽣上の懸念が⾼まった。

これらの懸念に応えて、福島県県⺠健康調査の⼀環として、児童・⻘少年の甲状腺検査を実施

放射線被ばくよる甲状腺がんのリスク増加に対する⼈々の懸念や甲状腺検査への関⼼の⾼まりは、将来の原⼦⼒事故後に甲状腺の健康状態を調査するプログラムを実施するかどうか、実施する場合にどのように⾏うかについて疑問を投げかけている。

原⼦⼒事故後の対応としての甲状腺超⾳波検査ガイドラインを策定する必要がある。

この検討では、成⼈の甲状腺超⾳波スクリーニングを実施しているいくつかの国で観察された甲状腺の罹患率の明らかな上昇を認識する必要がある。この現象は、甲状腺スクリーニングによりもたらされうる過剰診断(スクリーニングなしで検出されなかった甲状腺がんの検出、または⼈の寿命の間に症状または死を引き起こさなかったであろう甲状腺がんの検出)の問題を提起している。

⽐較的予後が良好とされる甲状腺がんに関して、早期診断の利点への懸念があり、原⼦⼒事故後に甲状腺超⾳波検査を計画するときは、これを慎重に検討する必要がある。

これを念頭に置いて、国際がん研究機関(IARC)は、現在の科学的証拠や過去の経験に基づいて原⼦⼒事故後の甲状腺超⾳波検査の⻑期戦略に関する勧告を作成するための他分野の専⾨家の協⼒を得た。専⾨家グループが作成した勧告は、多くの⼈々が放射性ヨウ素に曝露されるかもしれない将来の原⼦⼒事故に備えるものであり、過去の原⼦⼒事故からの教訓に学んでいる。この報告書は、過去の原⼦⼒事故の経験に基づいているが、過去の原⼦⼒事故時の施策・対策を振り返って評価したり、進⾏中のプログラムの継続に関するガイダンスを提供したりすることを⽬的としていない。⼊⼿可能なエビデンスが、それぞれの分野の専⾨家によってレビューされ、この技術⽂書作成者による推奨事項の基礎を⽰すものとして、各章にそれぞれ提⽰されている。

科学的証拠を検討した後、専⾨家グループは以下の2 つの勧告を⾏った。

  • 勧告1:専⾨家グループは、「集団を対象にした甲状腺スクリーニング」を実施すべきではないと勧告 専⾨家グループは、「集団を対象にした甲状腺スクリーニング」を対象とされた地域において、積極的に住⺠全員に参加を促していると定義。 また、対象とされた地域の住⺠は、個々の甲状腺線量評価にかかわらず、甲状腺検査に参加し、続いて確⽴されたプロトコルに従って臨床管理を⾏うと想定。専⾨家グループは、甲状腺の集団スクリーニングを⾏わないことを推奨。なぜなら、その 害が集団レベルでの利益を上回るから。
  • 勧告2:専⾨家グループは、「より⾼いリスクを持つ個⼈を対象にした⻑期間の甲状腺モニタリングプログラム」を提供することの検討を勧告 専⾨家グループは、「甲状腺モニタリングプログラム」を参加者の登録、甲状腺検査からの⼀元的なデータ収集、臨床管理などが含むものと定義。甲状腺モニタリングプログラムは、甲状腺の検査を受ける⽅法と⽅法を選択することができるものであり、⼦宮内や幼児期または⻘年期に甲状腺線量が100-500 mGy 以上曝露された⽅に選択的で主体的な参画を求めるものと定義され、進⾏していない状況での病気の早期発⾒により治療の恩恵を受けるためのフォローアップである。 「甲状腺モニタリングプログラム」は集団スクリーニングとは異なり、出発点は集団ではなく個体である。甲状腺モニタリングプログラムの中で、甲状腺検査とフォローアップに参加するかどうか、また、どのように参加するか、個⼈、家族、臨床医が共通の意思決定プロセスで決定される必要がある。 「⼈を中⼼とした保健サービス」の原則の下で、症状のない個⼈を対象にした触診や超⾳波検査を⾏うとの利害に関して、個⼈の価値観、好み、総合的な事柄に合致した情報による意思決定を最適化するために、適切に設計された教材によるサポートを検討することが求められる。

これらの勧告は、甲状腺疾患に関するモニタリングにおける意思決定の影響を考慮して、毒性(放射性物質を含む)物質への曝露、核事故への備えと対応を念頭において策定された。

ここで想定されるのは、疾患に関するモニタリング・プログラムに加えて、がん登録や原⼦⼒事故が起きていない平常時のダイナミックなリスクコミュニケーション・プログラムである。また、原⼦⼒事故がおきた際の能動タイプの線量計を⽤いたタイムリーな線量測定プログラムや安定ヨウ素の投与による甲状腺ブロック・プログラムなど、放射線被ばくを最⼩限に抑えるための防護措置も検討された。 専⾨家グループは、意思決定に必要なものとして科学的な根拠に加えて、社会経済的要因、保健医療資源、社会的価値観も重要な考慮事項であることを認識している。また、最終的な決定は政府、関係当局、そして原⼦⼒事故の影響を受けた社会によってなされると認識している。 これらの勧告は、原⼦⼒事故がおきた際の甲状腺モニタリングに関する意思決定、計画、実施に関与する公務員、政策⽴案者、および保健医療従事者を対象とし、その作業の参考となることを意図している。

第77回日本公衆衛生学会のメインシンポジウム3

2018年10月25日(木) 12:45~14:35 第1会場(ビッグパレットふくしま1階多目的展示ホールA)
福島県甲状腺検査の現状の紹介と今後の方向性に関する論点

地域差の原因解明の試み例

Thyroid nodule prevalence among young residents in the evacuation area after fukushima daiichi nuclear accident: Results of preliminary analysis using the official data


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