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ヘルスリテラシー
health literacy

健康に関する情報は一般的に分かりにくいものであり、その分かりにくい情報を使い、伝える上で便利な概念が、ヘルスリテラシーである。世界保健機関は1998年にヘルスリテラシーを、健康の維持向上のために情報を得て、理解し、使おうとする知識と技術と定義した 。しかし、この定義では、サービス利用者、患者、または住民側に知識の向上を求めるような負担を強いることにもなりかねない。そこで、最近は定義が拡大する傾向にあり、保健医療関係者の情報を伝える技術をも含むようになってきた。 ヘルスリテラシーを推進する上でのツールは様々あるが、その中でも、文章の読みやすさと内容のわかりやすさをリーダビリティという。この指標は、文章の長さや語彙の難しさから算出され、いくつかのツールが開発されている。その中でもフリーのソフトウェアとして公開されている帯2は(1)、人間が感じる文章のむずかしさを、従来の算出方法より幅広くとらえるために、小学校から大学の教科書を基準として、文章の学年レベルを判定する(2)。健康情報をつくる際に目指す学年レベルは、米国の国立衛生研究所の指針によると、6~7年生とされる(3)。

具体例:保育所の畑の土を入れ替えるべきかどうかを考える資料

オリジナル

  • 降下物により畑の土の放射性セシウム濃度は徐々に増加する
    • サツマイモなどの濃度も上昇する
    • 上昇の程度は環境によって異なる
  • 食品の安全基準に比べて小さい上昇
    • 対策の優先度を比較しては…
    • 実現可能であり、その価値が大きいのであれば、試みることもありそう

→学年レベル 10年生(帯2測定)

改訂案

  • 空から落ちてきて畑の土のセシウムが増える
    • どれくらいサツマイモに入るかも変わる
    • どれくらい増えるかは状況によって違う
  • 増えても食べ物の安全の目安より少ない
    • まず何をすべきかを考えては…
    • その中でできることをやってみては

→学年レベル 7年生(帯2測定)

  もう一つのポイントは、先行オーガナイザーの活用である(4)。これは、要点をはじめに示すテクニックで、上記に関しては、「生活する上で問題にならない低い量なので、保育の中での優先順位を考えて対策を立てる」ということなので、それがはじめに提示されていた方が分かりやすい。

参考資料

  1. ことば不思議箱 - 佐藤研究室.[帯3:日本語テキストの難易度推定].
  2. 佐藤理史.均衡コーパスを規範とするテキスト難易度測定.情報処理学会論文誌.2011; 52; 1777-1789.
  3. National Institutes of Health. MedlinePlus: How to Write Easy-to-Read Health Materials.
  4. カレールーを入れる
  5. 酒井由紀子.健康医学情報を伝える日本語テキストのリーダビリティの改善とその評価--一般市民向け疾病説明テキストの読みやすさと内容理解のしやすさの改善実験.Library and Information Science. 2011; 65: 1-35.

参考資料等

後藤 あや.ヘルスリテラシー─健康に関する情報を使う力・伝える力─
ヘルスリテラシー 健康を決める力
Aya Goto, Alden Yuanhong Lai, Atsushi Kumagai, Saori Koizumi, Kazuki Yoshida, Koji Yamawaki & Rima E. Rudd (2018) Collaborative Processes of Developing A Health Literacy Toolkit: A Case from Fukushima after the Nuclear Accident, Journal of Health Communication, 23:2, 200-206, DOI: 10.1080/10810730.2018.1423650
The Health Literacy Tool Shed
Suka M, Odajima T, Kasai M, Igarashi A, Ishikawa H, Kusama M, Nakayama T, Sumitani M, Sugimori H. The 14-item health literacy scale for Japanese adults (HLS-14). Environ Health Prev Med. 2013 Sep;18(5):407-15. doi: 10.1007/s12199-013-0340-z. Epub 2013 May 21. PMID: 23689952; PMCID: PMC3773092.
Nakagami, K., Yamauchi, T., Noguchi, H., Maeda, T. and Nakagami, T. (2014), Japanese functional health literacy test. Nurs Health Sci, 16: 201-208.
Nakayama, K., Osaka, W., Togari, T. et al. Comprehensive health literacy in Japan is lower than in Europe: a validated Japanese-language assessment of health literacy. BMC Public Health 15, 505 (2015).
Sumner P, Vivian-Griffiths S, Boivin J, Williams A, Venetis C A, Davies A et al. The association between exaggeration in health related science news and academic press releases: retrospective observational study BMJ 2014; 349 :g7015 doi:10.1136/bmj.g7015
食に関する報道のゆがみ(今村文昭)


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更新日:2021年03月14日 
登録日:2015年02月06日 

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