用語
せ/D
線量限度 dose limit
リスクを制御するための限度値で制御しやすい線源に適用されます(計画被ばく状況で適用される)。
線量限度は、公衆(実効線量として1mSv/y)と職業従事者(実効線量として100mSv/5yただし50mSv/yを超えない。年等価線量としては、眼の水晶体150mSv、皮膚500mSv、手および足500mSv)、緊急作業従事時(実効線量として100mSv、等価線量としては、眼の水晶体300mSv、皮膚1,000mSv、)があります(ただし国際的には緊急被ばく状況に適用されるのは線量限度ではなく参考レベル)。
放射線事故時の避難対策を取るべき線量やラドン対策を講ずべき線量は、公衆への線量限度よりも高いレベルとなっています。
これらの違いは誰かに都合のよいダブルスタンダードでは決してなく、状況に応じた目標上限値であり、それぞれの状況で最適化が目指されます。
解説記事
原子力発電所事故以降に一般の方々が受ける線量の基準
参考資料等
線量限度と線量拘束値
線量限度は、代表的個人について与えられるのに対して、線量拘束値は個々の線源から受ける被ばく線量として表現され、それぞれの施設の防護の基準として与えられているものだと考えられます。
放射線施設の放射線安全評価は、その施設の放射線防護性能を示すもので、線量の指標としては、線量拘束値としての性格に近いと考えられますが、日本の法令では、遮へいの基準は線量限度として表現されています。
英国では事業所に課せられるのは線量拘束値
Dose constraints for members of the public
155 Where employers anticipate that any work activity or facility is likely to expose members of the public to direct radiation or contamination, they should apply a dose constraint. It is recommended that the constraint on optimisation for a single new source should not exceed 0.3 mSv a year. Employers should take this recommendation into account in establishing a dose constraint for members of the public. The constraint should be applied to estimates of dose for representative individuals likely to receive the highest average dose from the work.
『公衆の線量限度』を担保するには?
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年1 mSvが一般公衆の追加被曝の上限と言われてるようですが、この根拠は1つの事業所が事業所に由来した放射線で敷地境界等で3ヶ月平均0.25 mSv以上の追加被曝を発生させてはいけないという告示に由来しているのではないでしょうか? |
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規制庁の資料(原子力施設の放射線防護基準について)や質問主意書(放射線被曝防護に関する質問主意書)の答弁書で考え方が示されています |
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RI規制法や医療法では敷地境界の線量限度は3月間で250 µSvとなっていますね |
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では、それぞれの事業所が年間1 mSvという限度を守っていても複数の事業所の影響を受ける一般人では年間1 mSvを超える場合もあり得るはずなので、この規制を元に一般公衆の追加被曝を年間1 mSvとするのは数が合わないのでは… |
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ある方があちこちに動くことを考えると全国の有象無象の施設がお互いの運転時間や敷地境界での値を調整し合わなくてはならなくなり、事実上施設の運転ができなくなるのではないかという疑問ですね |
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ありもしない仮想的なお話しで頭の体操に過ぎないと言われても、ビル診療所に両隣と上下で挟まれた場合の線量が気になるということかしら… |
現存被ばく状況の適用の地理的範囲
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食品の基準が国内で地域別に分けられた例はありますか? |
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過去にカナダでは事例があるそうです |
線量拘束値を超えてはいけないのですか?
IAEAのBSSでは、線量拘束値を超えることは、法的要件へのノンコンプライアンスには該当しないとされています。
1.22. Dose constraints and reference levels are used for optimization of protection and safety, the intended outcome of which is that all exposures are controlled to levels that are as low as reasonably achievable, economic, societal and environmental factors being taken into account. Dose constraints are applied to occupational exposure and to public exposure in planned exposure situations. Dose constraints are set separately for each source under control and they serve as boundary conditions in defining the range of options for the purposes of optimization. Dose constraints are not dose limits;
exceeding a dose constraint does not represent non-compliance with regulatory requirements, but it could result in follow-up actions.
IAEAのBSS
IAEAの考え方(日本は海外とは異なり独自の考え方で法体系が構築されています)

公衆の線量限度
III-3. For public exposure, the dose limits are:
(a) An effective dose of 1 mSv in a year;
(b) In special circumstances66, a higher value of effective dose in a single year could apply, provided that the average effective dose over five consecutive years does not exceed 1 mSv per year;
(c) An equivalent dose to the lens of the eye of 15 mSv in a year;
(d) An equivalent dose to the skin of 50 mSv in a year.
防護量と実用量
実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度は、周辺線量当量で担保すればよいのでしょうか?それとも個人線量当量で担保すればよいのでしょうか?
どちらかでなければならないとの規定が見当たりません。
モニタリングは空間線量が用いられています。
実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示
(実用炉規則第二条第二項第六号等の線量限度)
第三条
実用炉規則第二条第二項第六号、実用炉技術基準規則第四十二条第一項、貯蔵規則第一条第二項第三号、貯蔵設工規則第九条第一項及び貯蔵性能基準規則第十四条第一項の原子力規制委員会の定める線量限度は、次のとおりとする。
一 実効線量については、一年間(四月一日を始期とする一年間をいう。以下同じ。)につき一ミリシーベルト
現存被ばく状況と計画被ばく状況
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今の日本は、内閣府によると現存被ばく状況であるそうです。地域は福島県に限定しているわけではなく、日本全国に適用されているそうです。 |
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食品の基準は国内で共通のものとなっています |
現存被ばく状況の適用の地理的範囲
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食品の基準が国内で地域別に分けられた例はありますか? |
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過去にカナダでは事例があるそうです |
現存被ばく状況下での計画被ばく状況の適用
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計画被ばく状況での規制免除レベルが10マイクロシーベルトであり(明示はされていないが実効線量として)としているのはIAEAの考え方に基づいているそうですが、日本全体が現存被ばく状況であることは、2021年度から中学校2年生の理科の授業で用いられるクルックス管がX線装置かどうかを判定する際に、IAEAのGSR Part3のSchedule IのI.3.(c)項を適用するのは不適切ということですか? |
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原子力発電所の事故後の放射線防護では、特殊な状況に人々が置かれているという考え方が用いられていて、「緊急被ばく状況」や「現存被ばく状況」という概念を用いているけど、クルックス管の放射線安全に関しては、計画被ばく状況と考えられるので、原子力災害後の現存被ばく状況であるからといって線量限度の概念を適用しないのはよくないと思う |
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クルックス管の授業での利用は、特殊な状況ではないので放射線管理上、通常のルールが適用できるということですね |
現存被ばく状況と計画被ばく状況
質疑例
福島県双葉郡双葉町
Q104.経済産業省や文部科学省がICRP基準に準じてやろうとしているのは仕方がないが、線量の最適化というのは、低線量ワーキングループでも住民と話し合ってきちんと最適化をやるというふうに勧告にある。違反していないか。住民は年間20ミリシーベルトを区域分けするときに一つも意見なんか聞かれていないし、言えなかった。自分の都合のいいようにICRPの勧告を使わないでほしい。
線量限度と参考レベル
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介入線量レベルは同じで単にシナリオの違いですね。アメリカでは放射性ヨウ素の放出を安全側に設定しています。具体的には、臨界が一定期間継続するというシナリオです。その反面、放射性セシウムに関しては事故の影響を受けていない地域からの食糧支援が大幅に入るというシナリオに基づいています。 |
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事故後一定期間経過した後だと介入線量レベルが1ミリシーベルトと同じであっても、原子力事故を起こした国では、原子力災害の影響を受けた地域の作物などの摂取割合が高くなると考えられることから、誘導される濃度が低くなるということね。県の研修を受けた保健師さんから教わったわ。 |
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Codexでは輸入食品を全食品の10%程度と仮定していることもあり、日本の食品の基準値の10倍になっています。 |
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学んでみるとなんだそうかという感じだけど、学ぶまでのハードルが高そう… |
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原子力災害がおこった場合の食品の放射線安全を確保するために、事故直後の基準値策定の考え方はあらかじめ決めておくのはよくある話で、日本でもそれが機能しましたが、その後、その基準をどのように平常時のものに戻していくのかをあらかじめ決めておくことは困難な課題でどの国でも準備されていないのが現状です。 |
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数字のことは訳が分からないけど、学びたい人には疑問にわかりやすい解説して欲しいわ。 |
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疑問点は何でもお寄せ下さい。ご一緒に考えさせていただきます。 |
質問を頂きました
食べる食品はどの程度事故の影響を受けているのか?
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今の日本の食品はかなり広い範囲で原子力災害の影響を受けてしまっているので、食品に由来した線量の合計を一定の水準以下にとどめるには、個々の数値を低めに抑えておかなければならないのではないでしょうか |
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想定よりも広い範囲が影響を受けたので、あらかじめ決めていたパラ−メータを変化させて、基準値を小さく設定したという事実はありません |
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予め決めていたルールを守らなくてもよいの(放射線のリスクがご心配の方向け)?
子供への責任を果たすにはどうすればよいですか?
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事故のために管理区域の基準が守れないこともあると聞きました… |
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親として子供を守ることの責任を果たせないのではないかとご心配なのですね |
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受ける線量としては小さいや事故後は計画被ばく状況ではなく、「緊急被ばく状況」や「現存被ばく状況」が適用されるという説明では解消されない思いですね |
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これまでも十分に親としての責任を果たされてきたことを認めてもらう機会も必要なのかもしれない… |
本来は線量限度ではない例
なお、言うまでもありませんけれども、20ミリシーベルトというのは限度であって、できるだけそれを下げる努力をしなくてはならんことは当然のことでございました。
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