用語 せ/D

線量線量率効果
dose and dose rate effectiveness factor: DDREF

同じ種類の放射線であっても線量率が異なると生物学的な影響の度合いが異なる可能性がある。さらに小さい線量でも同様に生物学的な応答特性(2ヒットを起こす割合が1ヒットを起こす割合と比べて十分に小さい)から生物学的な影響の度合いが異なる可能性があると考えられている。
これらを、線量線量率効果と呼ぶ。リスク係数の算出では原爆被爆の線量線量率効果係数に対し、低線量・低線量率のリスクを半分と仮定している。

線量と影響との関係

WHOのリスク評価書

   
母親 原爆被爆のように短い時間に受ける場合に比べると長い時間かけて受けた場合では、リスクが小さくなると聞くけど本当かしら?
アオイ 動物実験でDDREFが認められた例があります
エミ WHOのリスク推計の報告書では、被爆者を対象にした疫学研究では「At high doses, a modest upward curvature is observed in the overall dose response for some solid cancers .」であることから、線量の大きさによって、健康影響との関係が影響を受けるのを補正するためにDDREFが導入され、ICRPはそれを2としているとの経緯を説明しています。その上で、そもそも不確かさが大きく、疫学研究では線量・線量率効果が認められないものもあるとして、慎重に考えてDDREFを考慮しないとしています
アオイ 会議ではその決定に2名が反対したことが明示されています
母親 原爆のように短い時間に高い線量を受ける場合に対して、低い線量の繰り返し、もしくは長時間にわたって受ける場合(低線量率の被ばく)でも、被ばくした総線量が同じでも発がんの影響のリスクの上昇が似たようになるような傾向が、CTスキャン、X線撮影、原子力施設の労働者などの疫学研究で明らかになってきているのではないでしょうか
エミ INWORKSなどに対する疫学者の方々の議論の行方を見守りたいです

大量一時摂取と少量長期摂取

   
エミ 放射線の種類にもよるのかもしれませんが、放射線生物学で、逆線量率効果が確認されたという話でも理解の難しさを感じます
母親 塩を一時に大量に食べると命の危険があるが、少量づつ食べることが必要という話を放射線にも当てはめてよいのかのどうかよくわからない
エミ 薬を大量の摂取したら危ないという例えもあるけど、効果を発揮するためには適量投与が必要というのもそうなのかとも思ってしまう
アオイ より小さいリスクで、実際にどうかは疫学研究の質を高めていかないとわからないのではないかしら

参考資料等

ICRP

Third International Symposium on the System of Radiological Protection Seoul, Korea October 22, 2015

Dose Rates Effect in Radiation Biology and Radiation Protection
2016年10月東京

ドイツでの取り組み(ICRPの取り組みとも連携した)

Dose- and dose-rate-effectiveness factor (DDREF)

Recommendation by the German Commission on Radiological Protection with scientific grounds
Assessment solely on the basis of scientific principles and criteria is not commensurate to the importance and function of DDREF.
The SSK recommends:

  • Based on current scientific findings, the SSK no longer considers justifications for the DDREF used in radiation protection as being sufficient.
  • In view of the assessments set out in this report, the SSK therefore recommends abolishing the DDREF or adjusting it to bring it into line with more recent findings.
  • Due to its importance to risk evaluation and impact on radiation protection, in the case of adjusting the DDREF, the SSK recommends in parallel that all of the other parameters pertaining to the detriment be adapted to the latest scientific findings.
  • The SSK means that an international agreement in these issues is urgently necessary and recommends that its assessment be used as a basis for international discussions on these issues.

米国での取り組み

New Information on Radiogenic Cancer Risks Since BEIR VII - Is it time for BEIR VIII? -

Review

P Jacob, W Rühm, L Walsh, M Blettner, G Hammer, H Zeeb. Is cancer risk of radiation workers larger than expected?

疫学研究

INWORKS

Cancer mortality and incidence following external occupational radiation exposure: an update of the 3rd analysis of the UK national registry for radiation workers

白血病

Ionising radiation and risk of death from leukaemia and lymphoma in radiation-monitored workers (INWORKS): an international cohort study

固形がん

Risk of cancer from occupational exposure to ionising radiation: retrospective cohort study of workers in France, the United Kingdom, and the United States (INWORKS)

Editorials

Ionising radiation in the workplace
この論文が解説されています。

国際がん研究機関(IARC)によるPRESS RELEASE

N° 235: Even low doses of radiation increase risk of dying from leukaemia in nuclear workers, says IARC(22 June 2015)
N° 238: Low doses of ionizing radiation increase risk of death from solid cancers(21 October 2015)

研究の意義

  • 国際間での大規模な研究
    • 低線量率での放射線曝露に対するリスクを調べる研究
  • 得られたリスク係数はこれまでの研究結果を支持
    • これまでの想定を超える大きなリスク(100mSv未満も含めて)は検出されなかった
    • 原子力発電所の労働者以外の放射線業務従事者では比較的高い線量を曝露することがあり、対策の維持・向上の必要性が示唆される

低線量率放射線曝露と低線量放射線曝露

  • 査読者からの指摘を受けて抄録が修正されている
    • 90%信頼区間(査読に対する最初の著者側の説明で片側検定に対応させているとしています)で集積線量が0-100 mGyの範囲でもリスクが検出されたこと(0.81per Gy; 0.01 to 1.64; web fig S1)がこの研究のポイントとの査読者の指摘があり、抄録が修正されています。この研究の重点をどう置くべきでしょうか?
  • 低線量でのリスク評価
    • 測定の検出下限の限界もあり、長期間での低線量曝露量の推計の不確かさを小さくすることには限界があると考えられます。
    • また、この研究では集積線量が 50-<100 mGyの範囲の集団(算術平均は70.1mGy) で観測された死亡数が1,167人であることから、0-100 mGyの範囲でもリスクが検出されたとしていますが、集積線量が 5-<10mGyの範囲の集団(算術平均は 7.2 mGy(10年間の勤務で毎月平均60μ Gy)) での相対危険の差異は明確ではないようにも見受けられ(この研究では、集積線量が< 5mGyの範囲の集団(算術平均は 0.6 mGyを比較対照(=Figure S1では点で表現)としているようです)、このような小さなリスクを明確にするには、より差の検出力を上げた研究(交絡因子の調節の質も向上させた) が望まれますが、どう実現するのがよいでしょうか。

追跡集団の特性は?

論文名

Cohort Profile: The International Nuclear Workers Study (INWORKS)

目的

INWORKS studyでの考えられるバイアスの検討

  • 記録された過去の線量記録の整合性を確認
  • 線量推計に関するバイアスと不確かさを吟味

観測項目

  • 健康に関連した個人の生活習慣に関する情報が収集されていない
    • 多くが既に死亡しており、これから情報を収集するのは困難
    • 大規模する集団なので今の枠組みではその情報の収集が困難
  • 線量推計のエラーに関して検討し、手法を改善(論文発表済み)
  • 線量計のタイプ別に臓器線量推計のための換算法を検討(induction and latency periodは考慮され感度分析がなされているが、曝露時期までは考慮されていない)

研究の強みと弱み(ここでは弱みに関して示す)

  • 喫煙や他の職業性曝露など交絡因子となり得るものに関して、情報を得るのが容易ではない経緯がある
  • 健康者雇用効果の吟味が求められる
  • 中性子線線量が評価できていない
    • 中性子評価の技術的な困難さがある
    • (単純に解析対象から除くのではなく)中性子曝露の可能性から集団を再編成して解析(できるだけ対応しようとしている)

中性子に関して

Ionising radiation and risk of death from leukaemia and lymphoma in radiation-monitored workers (INWORKS): an international cohort study では、累積外部被ばく線量のうち中性子によるものが、10%を超えるものの扱いなどに関して、感度分析を行い慎重に吟味していると考えられます。 このような個人を解析対象から外してしまっていた場合には、リスク検出能を低下させる方向に働きそうです。一方、より核燃料に近いところで働く労働者が健康上不利な状況にあるとすると、Health worker effectを弱める方向に働くことになっていたのかもしれません。 いずれにしても、INWORKSでは、中性子に関してもできるだけ情報を活用しようという方向ではあると思います。 これに対しては、中性子の曝露割合が多い労働者は、もともと健康面で不利であり、リスクが過大に評価されたのではないかとの懸念があり得るかもしれません。

Techa River Cohort

Protracted radiation exposure and cancer mortality in the Techa River Cohort.

Kerala, India-Karanagappally cohort

Background radiation and cancer incidence in Kerala, India-Karanagappally cohort study.
Although the statistical power of the study might not be adequate due to the low dose

Techa River Cohort

IARC

低線量率放射線曝露と低線量放射線曝露

Low doses of ionizing radiation increase risk of death from solid cancers

原爆被爆者

A Bayesian Semiparametric Model for Radiation Dose-response Estimation


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