用語 け/F

県民健康調査
Fukushima Health Survey

東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故による放射性物質の拡散や避難等を踏まえ、県民の被ばく線量の評価を行うとともに、県民の健康状態を把握し、疾病の予防、早期発見、早期治療につなげ、もって、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図ることを目的としている。
当初は、福島第一原子力発電所事故による県内の放射能汚染を踏まえ、福島県が、県民の健康不安の解消や将来にわたる健康管理の推進等を図ることが目的とされていたが、目的が見直され、名称も見直された。

「県民健康調査」検討委員会

県民健康調査における中間取りまとめ

よくある疑問の例

甲状腺検査では適切な診療となるように最大限の努力がなされているものの、予後の改善の効果が限定的ではないかとする説明がなされていますが、既に200人以上で甲状腺がんが発見されています。この発見数は理論的に多すぎないですか?発見数が予想よりも多いのは、原子力発電所事故による放射線曝露に起因すると考えるのが合理的ではないのですか?

事前に予想されていなかった発見数

事前にこのように多くの症例が発見されることは予測されていませんでした。無症状者を対象とした(以前よりも質が改善された)超音波検査が、これまでに行われていなかったからです。

推測されている発見数

がん罹患の統計を用いて推計が試みられており、観察結果が放射線の影響がなくても説明しうることを示しています。推定は仮定に基づいていますので、その仮定の妥当性の検証も課題となります。
Takahashi H, Takahashi K, Shimura H, et al. Simulation of expected childhood and adolescent thyroid cancer cases in Japan using a cancer-progression model based on the National Cancer Registry: Application to the first-round thyroid examination of the Fukushima Health Management Survey. Huang. L, ed. Medicine. 2017;96(48):e8631. doi:10.1097/MD.0000000000008631.

解説

Takahashi H. Results of the first-round thyroid examination of the Fukushima Health Management Survey

質のよい(災害)疫学研究を行うためには

健康に影響を与えうるような災害時には、そのイベントが健康に与えた影響を調べるために、疫学研究が行われます。疫学研究の結果は様々な要因の影響を受けうるので、それらの制御が重要となります。このように疫学研究に参加し、科学的な知見を生産することに被災した方々は貢献する権利を持つと考えられますが、研究参加には不利益も伴うので、リスクをあえて取る場合には、そのことに理解を得ることも重要となります。

(災害)疫学研究と公衆衛生サービス

災害後の健康調査は、公衆衛生サービス(事故による健康影響を知ることや起こりえる健康影響の低減を図ること)として行うことも考慮する必要があります。被害を受けた方々の健康に関する権利に配慮し、公平性の観点で施策を展開する必要もあるからです。

放射性ヨウ素等の放出量推測値が、年が経つにつれて、上昇しています。様々な推計データの中では、日本政府の推測値は最小の部類です。2011-2012年当時の推測値に基づく議論は今でも妥当なのでしょうか?

放射線の健康影響を考えるには、放射線の曝露量との関係を調べる必要があります。当時の人々の放射性ヨウ素への曝露量に関しても科学的な推計の改善が試みられています

甲状腺がんは特に女性に多く、男女比は1:4なのに福島では1:2である理由は?

性差が小さいことから放射線が原因ではないかと疑われるところだと思います。それを検証するためには、曝露した放射線量が甲状腺がんの罹患の増加の説明になっているかを調べることが考えられるでしょう。一方、性差は年齢にも依存します。より若年で発見されるものでは性差が小さくなるとも考えられます。

甲状腺がんは非常にゆっくり進行し、熟年女性では数割が罹患します。これは手術が必要になる程度に進行するには数十年要することを示しています。しかし、福島県での甲状腺検査で発見された症例では、その大半が既に手術を受けるほど症状が深刻化している理由は?

考えられることでは小児では進行が早いものの結果としての予後が悪くないということです。同様のことが神経芽細胞腫でも経験されています。このことも検証するためにはリスクを取った臨床研究が必要となるでしょう。

過剰診断は年齢が高いグループを対象とした場合には、進行が遅いものを発見することからそのリスクを懸念しないといけないのは理解できますが、小児では進行が早くそれとはあてはまらず、小児ではむしろ発見される確率が小さくタイプ1エラーをより考慮しないといけないことが成人とは異なるのではないのですか?

予後改善のみを目的とする場合には(災害後の公衆衛生サービスであることを考慮しない場合)、対象とする年齢などを総合的な観点から判断する必要があります。甲状腺がんの場合、今のところ検診が科学的な根拠を持って推奨されていないのは成人ですが、小児においてもそれを積極的に行うべきという科学的な知見は今のところ得られていません(このことは災害後の公衆衛生サービスとしての調査や研究の意義(それぞれ不利益を伴うものだとしても)を否定するものではありません)。

過剰診断のリスクは否定できないのかもしれませんが、発見された症例に対して注意深く対応することで介入による予期しない不利益を最小限にできるのではないですか?

検査を受けた方への不利益を最小限にするために最大限の工夫がなされています。治療に伴う事象の統計も発表されるでしょう。ただし、検査で被る不利益は診断や治療での介入にとどまりません。

甲状腺がんと診断されることへの様々な課題のうち不合理なものは、解消されるべきであり、それが実現すれば、過剰診断のデメリットがなくなり、検診参加のリスクを下げられるのではないか。だとすると、甲状腺がんと診断されることへの様々な課題のうち、改善すべきものは立場の違いを超えてその実現に貢献すべきではないか?

不合理なものは解決すべきだと思われますが、それで全ての不利益は解消できるかどうかも課題となるのではないでしょうか(難問)。

調査の目的への理解は?

そもそも甲状腺検査は何のために行うのだろう?

   
えみ 何故、今さら…と疑問を感じつつも、県の研修を受けて、県立医大の方からお話しをお伺いして、嚢胞と結節の違いが理解できただけではなく、調査は 継続して行わないと、変化を調べられないことに気付きました。調査を受ける側が調査の意義や問題点を理解する必要があると感じました
にゃんこ 調査の目的や意義の説明だけではなく、限界や課題についても率直なお話しがありました
えみ 医大での取り組みが何であるのか、これまで分かりにくく感じていましたが、県全体を調査していることが分かりました。でも、健康調査をすすめるだけだけでなく、今、何をしていったら、子育て世代の不安が解消できるのかも考えていくべきではないかと思いました
にゃんこ 人々の気持ちに添った対応が必要と言うことですね
えみ 調査してもらい結果を示してもらっても、その結果にどう対応すればよいのかを考えるのが大変な感じがあります。横の機関とも連携が取られた福島で生活していく上で役立つような具体的な内容も聞いてみたいと思いました

検査の不利益にも言及している福島県からのお知らせ

甲状腺検査のお知らせ

甲状腺検査への疑問を考えるためのヒント

皆さん、疑問をお持ちなのでは

以下の長いやりとりで何を議論しているのか?

   
母親 保健福祉職員向けというだけあって一般の私たちにはよくわからない話です…。
エミ いただいた疑問を考えていると長くなってしまい、最後まで読むにはかなりの集中力が必要だと思う
母親 ある程度の専門的知識(統計学、疫学等)のある方には面白い記述内容かもしれませんが、一般のお母さん方は最初読み始めて分からなくなった段階で、それ以上は読む気になれずに、諦めてしまいそう…。
エミ では、ここでまとめてみます
母親 結論を先に、お母さん方が疑問持っている事や心配ごとについて分かりやすく端的に(短く)説明して欲しい…

結論

色々とある疑問や疑念に答えて欲しい

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