用語 げ/P

原因確率
probability of causation

ある疾患を発症した場合に、その原因が着目している曝露である確率
吉永 信治, 原因確率を用いたがんの放射線起因性の評価:課題と展望, 保健物理, 2021, 56 巻, 4 号, p. 306-314

原因はあのとき高い放射線曝露?

   
母親 原子力発電所事故の後に身近な人ががんを発症すると、原因はあのとき高い放射線曝露ではないかと疑ってしまう…
エミ 避難すればよかったのかもしれないと後悔しそうですね…

原因確率が計算できる

   
アオイ がん発症に放射線曝露がどの程度寄与しているかを計算(原因確率分析)するツールがあります

有症状で発見された場合

計算ツール例(Probability of Causation--NIOSH-IREP)

計算条件

  • 2001年生まれの男児
  • 2011年に甲状腺の等価線量として10 mSvの放射線曝露を受けた。
  • 2015年に甲状腺がんと診断された。

計算条件

計算結果

計算結果

UNSCEAR報告書(2013)からの推計

UNSCEAR 2013 REPORT Vol. I SOURCES, EFFECTS AND RISKS OF IONIZING RADIATION. United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation. UNSCEAR 2013 Report to the General Assembly, with scientific annexes

Volume I: Report to the General Assembly, Scientific Annex A

SCIENTIFIC ANNEX A

Levels and effects of radiation exposure due to the nuclear accident after the 2011 great east-Japan earthquake and tsunami

E11. Thyroid cancer. The risk of thyroid cancer following radiation exposure is strongly modified by the age at exposure with young children under age 6 years being at highest risk and risk decreasing with increasing age at exposure [U9]. The Committee estimated lifetime additional absolute risk of thyroid cancer due to irradiation for a hypothetical group of Ukrainians who received an absorbed dose to the thyroid of 0.2 Gy low-LET radiation at age ten years [U14]. For males, the exposure was estimated to add 0.07% (95% confidence interval, CI: 0.01%, 0.21%) to the baseline risk of thyroid cancer of 0.14%. Corresponding values for females were 0.59% (95% CI: 0.11%, 2.1%) and 0.62%.

同様の条件だと、ベースラインで10万人中140人が生涯に甲状腺がんに罹患するという前提で、10 mSvの甲状腺の等価線量でadditional absolute risk が0.07%×10[mGy]/200[mGy]=0.004%となります。これは、10万人中4人の増加を意味しますので、原因確率は、4/(140+4)=3%となります。
女児の場合には、ベースラインで10万人中620人が生涯に甲状腺がんに罹患するという前提で、10 mSvの甲状腺の等価線量でadditional absolute risk が0.59%×10[mGy]/200[mGy]=0.03%となります。これは、10万人中30人の増加を意味しますので、原因確率は、30/(620+30)=0.6%となります。

成人女性が有症状で発見された場合

計算結果

   
エミ 計算したら放射線が原因である確率が思ったより小さかったけど、この結果をどう受け止めればよいのかしら…

原因確率の過小評価

曝露群での発症が早まった分があれば、その分、原因確率を過小評価することになる。

参考資料等

放射線とがんの関係

厚生労働省

業務上疾病に関する医学的知見の収集に係る調査研究報告書
膀胱がん・喉頭がん・肺がんと放射線被ばくに関する医学的知見を公表します(平成27年1月28日)
胃がん・食道がん・結腸がんと放射線被ばくに関する医学的知見の公表(平成24年9月28日)

放射線影響研究所

放射線の健康影響

質問主意書

原爆症認定訴訟に関する質問主意書


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更新日:2023年12月27日 
登録日:2015年04月20日 

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