用語 げ/T

原子力災害後の甲状腺モニタリング
Thyroid Health Monitoring after Nuclear Accidents

IARC

IARC Technical Publication No. 46: Thyroid Health Monitoring after Nuclear Accidents
日本語訳

資金情報

平成29年度甲状腺モニタリングの長期戦略に関する国際専門家グループにおける検討支援委託業務
契約締結情報の公表:平成29年度契約

第⼀章 要約

原⼦⼒災害に備えることの必要性が指摘

原⼦⼒発電の利⽤状況

チョルノービリ原⼦⼒発電所事故では放射性ヨウ素への曝露で⼩児期および⻘年期の曝露後の甲状腺がんの罹患率の増加

東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所事故後にも、甲状腺がんのリスクに関する公衆衛⽣上の懸念が⾼まった。

これらの懸念に応えて、福島県県⺠健康調査の⼀環として、児童・⻘少年の甲状腺検査を実施

放射線被ばくよる甲状腺がんのリスク増加に対する⼈々の懸念や甲状腺検査への関⼼の⾼まりは、将来の原⼦⼒事故後に甲状腺の健康状態を調査するプログラムを実施するかどうか、実施する場合にどのように⾏うかについて疑問を投げかけている。

原⼦⼒事故後の対応としての甲状腺超⾳波検査ガイドラインを策定する必要がある。

この検討では、成⼈の甲状腺超⾳波スクリーニングを実施しているいくつかの国で観察された甲状腺の罹患率の明らかな上昇を認識する必要がある。この現象は、甲状腺スクリーニングによりもたらされうる過剰診断(スクリーニングなしで検出されなかった甲状腺がんの検出、または⼈の寿命の間に症状または死を引き起こさなかったであろう甲状腺がんの検出)の問題を提起している。

⽐較的予後が良好とされる甲状腺がんに関して、早期診断の利点への懸念があり、原⼦⼒事故後に甲状腺超⾳波検査を計画するときは、これを慎重に検討する必要がある。

これを念頭に置いて、国際がん研究機関(IARC)は、現在の科学的証拠や過去の経験に基づいて原⼦⼒事故後の甲状腺超⾳波検査の⻑期戦略に関する勧告を作成するための他分野の専⾨家の協⼒を得た。専⾨家グループが作成した勧告は、多くの⼈々が放射性ヨウ素に曝露されるかもしれない将来の原⼦⼒事故に備えるものであり、過去の原⼦⼒事故からの教訓に学んでいる。この報告書は、過去の原⼦⼒事故の経験に基づいているが、過去の原⼦⼒事故時の施策・対策を振り返って評価したり、進⾏中のプログラムの継続に関するガイダンスを提供したりすることを⽬的としていない。⼊⼿可能なエビデンスが、それぞれの分野の専⾨家によってレビューされ、この技術⽂書作成者による推奨事項の基礎を⽰すものとして、各章にそれぞれ提⽰されている。

科学的証拠を検討した後、専⾨家グループは以下の2つの勧告を⾏った。

  • 勧告1:専⾨家グループは、「集団を対象にした甲状腺スクリーニング」を実施すべきではないと勧告 専⾨家グループは、「集団を対象にした甲状腺スクリーニング」を対象とされた地域において、積極的に住⺠全員に参加を促していると定義。 また、対象とされた地域の住⺠は、個々の甲状腺線量評価にかかわらず、甲状腺検査に参加し、続いて確⽴されたプロトコルに従って臨床管理を⾏うと想定。専⾨家グループは、甲状腺の集団スクリーニングを⾏わないことを推奨。なぜなら、その 害が集団レベルでの利益を上回るから。
  • 勧告2:専⾨家グループは、「より⾼いリスクを持つ個⼈を対象にした⻑期間の甲状腺モニタリングプログラム」を提供することの検討を勧告 専⾨家グループは、「甲状腺モニタリングプログラム」を参加者の登録、甲状腺検査からの⼀元的なデータ収集、臨床管理などが含むものと定義。甲状腺モニタリングプログラムは、甲状腺の検査を受ける⽅法を選択することができるものであり、⼦宮内や幼児期または⻘年期に甲状腺線量が100-500 mGy 以上曝露された⽅に選択的で主体的な参画を求めるものと定義され、進⾏していない状況での病気の早期発⾒により治療の恩恵を受けるためのフォローアップである。 「甲状腺モニタリングプログラム」は集団スクリーニングとは異なり、出発点は集団ではなく個体である。甲状腺モニタリングプログラムの中で、甲状腺検査とフォローアップに参加するかどうか、また、どのように参加するか、個⼈、家族、臨床医が共通の意思決定プロセスで決定される必要がある。 「⼈を中⼼とした保健サービス」の原則の下で、症状のない個⼈を対象にした触診や超⾳波検査を⾏うとの利害に関して、個⼈の価値観、好み、総合的な事柄に合致した情報による意思決定を最適化するために、適切に設計された教材によるサポートを検討することが求められる。

これらの勧告は、甲状腺疾患に関するモニタリングにおける意思決定の影響を考慮して、毒性(放射性物質を含む)物質への曝露、核事故への備えと対応を念頭において策定された。

ここで想定されるのは、疾患に関するモニタリング・プログラムに加えて、がん登録や原⼦⼒事故が起きていない平常時のダイナミックなリスクコミュニケーション・プログラムである。また、原⼦⼒事故がおきた際の能動タイプの線量計を⽤いたタイムリーな線量測定プログラムや安定ヨウ素の投与による甲状腺ブロック・プログラムなど、放射線被ばくを最⼩限に抑えるための防護措置も検討された。 専⾨家グループは、意思決定に必要なものとして科学的な根拠に加えて、社会経済的要因、保健医療資源、社会的価値観も重要な考慮事項であることを認識している。また、最終的な決定は政府、関係当局、そして原⼦⼒事故の影響を受けた社会によってなされると認識している。 これらの勧告は、原⼦⼒事故がおきた際の甲状腺モニタリングに関する意思決定、計画、実施に関与する公務員、政策⽴案者、および保健医療従事者を対象とし、その作業の参考となることを意図している。

第77回日本公衆衛生学会のメインシンポジウム3

2018年10月25日(木) 12:45~14:35 第1会場(ビッグパレットふくしま1階多目的展示ホールA)
福島県甲状腺検査の現状の紹介と今後の方向性に関する論点

地域差の原因解明の試み例

Thyroid nodule prevalence among young residents in the evacuation area after fukushima daiichi nuclear accident: Results of preliminary analysis using the official data
人為的な要因に関しても調整できるような工夫も求められるところだと思います。

IARCのリポートに示された論文例

Topics Lessons learned on public health from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident

参考資料等

国際的な比較検討例

A survey on emergency thyroid monitoring strategies and capacities in Europe and comparison with international recommendations

Child and Adult Thyroid Monitoring After Reactor Accident

OPERRA > CAThyMARA

THE THREE MILE ISLAND NUCLEAR PLANT ACCIDENT

HATCH, M. C., et al. (1990). "CANCER NEAR THE THREE MILE ISLAND NUCLEAR PLANT: RADIATION EMISSIONS." American Journal of Epidemiology 132(3): 397-412.)

IARCの発がん性分類

AGENTS CLASSIFIED BY THE IARC MONOGRAPHS, VOLUMES 1–123

         
Group 1 Carcinogenic to humans 120 agents
Group 2A Probably carcinogenic to humans 82
Group 2B Possibly carcinogenic to humans 311
Group 3 Not classifiable as to its carcinogenicity to humans 500

福島県の甲状腺検査のお知らせ分の改訂

第36回「県民健康調査」検討委員会(令和元年10月7日)での議論を受けた改定案

県民健康調査 甲状腺検査のお知らせ文改訂案について

検出力

Peter Jacob, Alexander Ulanovsky, Christian Kaiser, Maria Blettner. Expected influence of the accident on thyroid cancers

課題を検討している例

若年型甲状腺癌研究会

放射線曝露による甲状腺機能への影響の検証

Cioffi DL, Fontana L, Leso V, Dolce P, Vitale R, Vetrani I, Galdi A, Iavicoli I. Low dose ionizing radiation exposure and risk of thyroid functional alterations in healthcare workers. Eur J Radiol. 2020 Nov;132:109279. doi: 10.1016/j.ejrad.2020.109279. Epub 2020 Sep 13. PMID: 32950799.

日本診療放射線技師会からの貢献をいかす制度の整備の取り組み

令和6年度原子力規制委員会 第20回会議議事録令和6年7月17日(水)

○伴委員
これまで協力機関というのはその地域の状況に応じて立地道府県が指定するという形になっていましたけれども、甲状腺モニタリングに関して測定要員の確保というのが非常に重要な課題になっていて、そこに日本診療放射線技師会が全面的な協力を申し出てくださって、本当にありがたいことなのですけれども、その場合に、各道府県が指定するのではなくて国が直接指定するという形の方が効率的なので、こういう改定をするということで非常に合理的なことだと思いますけれども、1点確認は、技師会は日本技師会だけではなくて都道府県ごとの技師会もあると思うのですけれども、その場合に、例えばその立地道府県が特定の都道府県の技師会に対して協力機関として要請を行って、さらに一方で、国は日本技師会に対して協力機関として要請をするという形もあり得るということですよね。
原子力規制庁の山本でございます。
御指摘のとおりでございまして、まず立地道府県をそれぞれ各都道府県ごとにあります県ごとの技師会を恐らく協力機関として指定いただいて、そこで要員を確保いただく。ただ、これだけでは不十分でございますから、国が指定をします日本診療放射線技師会のような全国組織ですね。この場合は恐らくは東京、名古屋といった大都市圏、非常に測定要員の候補となる会員の方が多いところから派遣をいただくという体制で要員の確保を図っていくということになろうかと思っております。
今、伴委員からも御紹介がありましたように、甲状腺モニタリングの測定要員に関しては、診療放射線技師会の全国組織である日本診療放射線技師会から以前の指針改正あるいは指定要件の改正の際に協力できる旨のパブリックコメントの回答もいただいてございますので、是非こういう団体を対象に新たな協力機関として指定していくことを検討していきたいと思っております。
○山中委員長
今後意見公募をさせていただくので、その中でまた手を挙げていただくような機関が出てくるかもしれませんので、適宜進めていただければと思いますが、よろしいでしょうか。

原子力災害対策指針の改正案に対する意見募集について(原子力災害医療協力機関を国が指定する枠組みの新設)
結果の公示
原子力災害拠点病院等の役割及び指定要件の改正案に対する意見募集について
結果の公示


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更新日:2024年09月12日 
登録日:2018年10月13日 

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